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2007-02-26

第25回「一駅分の季節」

まるでトンネル内の溜まった空気を押し出すホンプのごとく勢いよく滑り込んで来る地下鉄。地下だというのに時には地上以上の突風を巻き起こし、プラットホームに待つ人々 を困惑させる場面もよく見かける。思えば地下には季節も時間も無い。無いと言っても それは、感じ辛いという意味だ。およそ気温も光量も一年を通してほぼ一定に保たれて おり、特に天気などに関しては判別のしようがない。雨の日に地下鉄に傘の忘れ物が多く見られるのが、例の一つではないだろうか。地下だけではない。ここ30年で都市部の冷房率は100%に迫る勢いで、ひとたび館内に入ってしまえばそこには季節と無縁の快適な空間が確保されている。夏期の通勤時の蒸せ返りも車内冷房の普及により幾分回避されたはずだ。このような快適な空間造りは仕事の効率を上げ、人々をストレスから開放させる。しかし、ただでさえ日本の四季が薄れ始めている今、ここで意識としての‘季節感’を無くしてしまうとどうなるだろうか。寒い時は温もりをもとめて、暑い時は涼しさを探す。どこか季節を毛嫌いしがちな生活姿勢の中で、あえて一駅余分に歩いてみよう という気持ちを忘れずにいれる心でいることで、毎日は日ごと移り変わるだろう。
贅沢な話だが。。。

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