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2006-04-01

第19回「春」

季節の変わり目をなにで感じるかは人それぞれであるが、わかり易さで言えばやはり気候であろう(僕は幸い花粉症ではないので花粉で季節を察することなく済んでいる)。いくら季節の花が開き始めたといっても、分厚いジャケットを羽織っての花見では、どこか気分が出ない。とくに今年の東京はそうなのだ。気象庁では一週間程前に東京の桜は満開だと宣告していた。にも関わらず、ここ数日の肌寒さと言ったらまるで‘春’を感じない。下手をすれば、このまま冬を引きずったまま、知らぬ間に梅雨に突入してしまうのでは…と変な心配すらしてしまいがちである。さて、そんな疑問も沸き立つ‘春’という季節について話をしよう。僕は四季の中で春が一番好きな季節である。理由はいくつかある。まずはその匂い。草木が芽吹き始めた匂いなのか、詳しくはわからないが、冬のピリッと張り詰めた硬い匂いとは明らかに違う、‘やわらかい匂い’が春にはある。この匂いを感じた時こそが気温以上に春を体感できる瞬間であり、喜びの瞬間でもある。つぎにその色合い。緑や花の色味が溢れ、空はほのかに白く霞む。人の服装も自然と暖色系へと移行し、街全体がパステルカラーに染まり出す。この色合いが目を楽しませてくれる。そして一番の決め手となっているのが、僕の中の感覚として一年の始まりにあたる季節が‘春’であること。これはまだ学生時代の季節感の名残りなのかもしれない。しかし社会的に見ても、新生活のスタートラインは大抵の場合、春と設定されている。そういう意味でも、やはり春は一年のもうひとつの区切りであり、何か新しいものを予感したくなる季節なのである。一年で最も視野が広くなる季節‘春’に、今年の僕はなにを予感しようか。018

 
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